大阪の不倫

家は、車の外に一度おろされたが、すぐまたかつぎ上げられ、しばらくごとごとゆれていたかと思うと、じゃりじゃりと底のすれる音、からんというほがらかな金属性の響、家は何か金でできた道具の上におろされた感じである。「おや、変だな」と思う間もあらず、がちゃんと、びっくりするような、大阪の不倫とぶつかる音。同時にあたりの騒音が、ぱったりきこえなくなってしまった。まるで墓場の底のような、ひしひしと身に迫る静けさだ。「どうしたの?ここ、どこなの?」汗ばむ程もしっかりと、母の頚にしがみついていたまゆこ少女が、おびえて尋ねた。「しっ」助手は、用心深くまゆこの声を制しておいて、なおしばらく耳をすました。ひょっとしたら、探偵の手はずが狂ったのではあるまいか。とすると、ここは一体全体どこであろう。もしや、もしや……葬式車の行きつく先は、いわずとしれた葬式場だ。ああ、分った、この家は葬式場の炉の中へとじこめられてしまったのだ。さっきのがちゃんという金の音は、炉の入口の鉄の扉がしまった音に違いない。そうだ。もう少しも疑う処はない。私達は今、美しい炉の中にいるのだ。彼女は、かつて近親の葬式を送って葬式場へ行った記憶を呼び起した。陰鬱なこんくりーとの壁に、黒い鉄のとびらがずらりと並んでいた。