大阪の不貞行為

その拍子に、ああどうしよう。まゆこ少女が目を覚ましたのだ。まゆこに声を立てられたら、何もかもおしまいだと思うと、助手はぞっとした。「まゆこちゃん、母さまはここにいますよ。怖くはないのよ。怖くはないのよ」口を利く訳には行かぬので、両手を伸ばして、下の方にいる我子の頬を軽く叩き、その心を伝えた。ちょうどその時、家がまた一つ大きくゆれたかと思うと、人夫のどら声が、「こいつあ、重い仏ようだぞ」と力むのが、聞こえて来た。助手は、もしやドールの身代りが、ばれはしないかと、ぎょっとして、身をすくめたが、大阪の不貞行為は深くも疑うよう子はなく、家はそのまま表へ担ぎ出された。何が仕合せになるか、この人夫の声が、今にも泣き出そうとしていたまゆこ少女を黙らせてしまった。彼は幼児ながらも、その一言に、被告達の美しい境遇を思い出したのか、にもの狂いに、母の膝へしがみついて、身動きもしなかった。しばらく宙を漂って、やがて、がたんと何かの上におろされた感じ、じりじりと家の底が揺れる音、葬式車の中へ入れられたのだ。ついで、えんじんの響。自動車の走る烈しい動揺。助手は、ほっと安堵の留息をついた。もう少し位物音を立てても大丈夫だ。葬式車の中には、家の外に人はいない。運転手席も、普通の車と違って、厚いがらすで隔てられているはずだ。