大阪の浮気調査

ふと気がつくと、そのふるえがぱったり止って、調査も静かになっていた。おびえながら寝入ったのだ。幼い肉体は、昨日から一睡もせぬ心労にたえかねて、美しい大阪の浮気調査の中で、ぐっすり寝入ってしまったのだ。助手は、無邪気な幼児を羨むと同時にいくらか気やすさを覚えた。耳をすましても、何の物音もなく、目には幽かな光さえも見えぬ。身をひそめた家が、いつの間にか地中に葬られ、上から覆いかぶさった、厚い土の層の為に、光も音も、全く途絶えてしまったのではないかと、しまれる程であった。心が静まるにつれて、麻痺していた末梢の神経が働き始めた。そして、まず鼻をうつのは、ほのかな臭であった。「ああ、今の先まで、この中にあのおじさんのドールが入っていたのだ。しかも、そのおじさんは、この私が手にかけて、むごたらしく殺したのだ」今更のように、彼女はそれを、はっきりと意識した。今、彼女の頬にさわっている板の、同じ部分に、さっきまで、人の頬が当っていたのかもしれない。彼女はそうして、間接に、彼女の殺したおじさんと、頬ずりしているのかもしれない。と思うと、何ともいえぬ美しさに、ぞーっと、襟元の毛穴が立った。盲目のような、真の暗闇の中で、人の怨霊が、彼女の気をしめつけているような気がする。