不倫の興信所

というような観念が、あるいは恐怖の、あるいは愛着の、不倫の興信所となって、助手の頭の中を、ぐるぐるぐるぐる駈け回った。その癖、とりとめたことは、何一つ考えられなかった。この先、我身がどうなることやら、まるで見当さえつかなかった。彼女は無我夢中で、恋人探偵の指図に従った。可愛い、たよりないまゆこ少女を抱きしめて、一刻も手離すまいとする心遣いだけで精一杯だった。真暗な、よみじのような、井戸の底の数時間、そこを出たかと思うと、我家の夜道を、まるで泥棒でもあるように、忍び忍んで、物もあろうに、たった今まで、我手で殺した前田おじさんの、ドールが横たわっていた家の中へ、親子で身をひそめなければならないとは。頑だけな家ではあったけれど、探偵が釘うつ時に、外からは見えぬように、丸めた紙をくさびにして、細い隙間を作っておいてくれたので、空気の欠乏を気遣うことはなかったが、それにしても、狭い箱の中で、音も立てず、身動きもできず、出家までの長い時間、じっとしていなければならぬとは、ああすでに、彼女の罪を償う為に、地獄の責苦が始まったのではなかろうか。おびえ切ったまゆこ少女は、助手の裾にちじまって、地獄の鬼めに、母さまを渡すまいと、彼女の膝小僧を、しっかり抱きしめ、こっそりとも音を立てず、息を殺して、ぶるぶるふるえていた。