不倫

——君、わたしを裸にして公衆の立会をうけて調べて頂戴、そのかわりに……」翠の雫の滴っている耳朶を桃いろにして、睨めつけるのだった。「もし、わたしの玉のような体に、少しでも怪我があったらきかないよ。わたしもハンケチ女の紫組の助手さんだからね」こう言われて尻尾を巻かない裁判官があればもぐりである。果たして、彼女をさんざ罵倒した裁判官は蒼くなって謝罪した。けれど助手さんはきかなかった。「いやよ!さ、裸にして調べて頂戴、君も男じゃないこと」すると、群衆の中に交じって、それとなく弥次っていた隊の中から、神学生の大阪 不倫調査がつかつかとそこへでてきて、鹿爪らしく仲裁した。彼女は今村と何か目交せをして、「じゃ、君にまかせるわ。——そのかわり晩までにごあいさつがないと、わたし、どんなことをするか分らなくってよ」と、幌の中へことばを投げて、助手さんは恥しげもなく、折れたはずの脚をもって軽快に歩き去った。尾行は揺るぎ出した。それとほとんど一斉に切符売場は殺到する客で混乱しだした。