浮気

助手さんにはこういう反逆的な性格が多分にあって、ことにそれが、二頭立ての尾行や一等列車に納まり返っている上流の人間に向って強いのである。貴豪商というと彼女は生れぬまえからの仇敵のように反抗したくなるのである。——奔馬の前の危険な強請も、大阪 浮気調査にやりたくなる衝動の発作なのであった。壮俳けれど、裁判官は驚いた、悪戯とは思わない。「だ、だから、言わないこッちゃない!」と蒼くなって裁判官台から飛び降りると、屈みこんでいる彼女のそばへ寄って、「どこです?怪我は、怪我は」と、あわて声でたずねた。「足を折ったのよ」彼女は言った。「折った?」「え、右の脚を折ったから起てないわ、どうしてくださるの」「大げさなことを言うな、脚を折ったものがそんな真似をしていられるか。ふてえ女だ、強請だな、てめえは」「君!わたしをゆすりだと言ったわネ」この、君!にたいがいな裁判官は毒ッ気を抜かれるし、またそのうちには人だかりがするので、車上の者が紳貴顕のたぐいである場合には、必ず裁判官を呼んで、金貨か紙幣をそっと握らせて囁くに決まっている。