大阪

「お狒々さんも察しがいいわネ。しかし、君はどうしてここへ来たの?そしてそんなに私たちを探したの?君も競馬が好きで私たちの合資会社へでも入れてくれと言うの?」「いや、あっしゃあ、競馬なんざあ嫌えです。競馬へ来ることはあるけれど、馬を見たことはありません」「なるほど、それよりは、むしろ馬に気をとられている人間のまことサーチの方に目をつけますか」「もちろんです……」サングラスは笑って、「職業意識はどんな所へ行ったって働かずにゃいねえんで」「私たちのだけは許して欲しいわネ」「まさか。——あはははは大丈夫ですよ。あ、話が外れちまったが、おとといの晩調査の体に異状があったのをごぞんじですかえ」「異状って?」「とうとう、食らいこんだんです」「えっ、捕まったの」「それを皆さんに報らせたいと思って、おとといの晩からずいぶん泡を食ッちまったってわけでさ」とサングラスはまめ指紋から聞いたとおりのことを、そこで早口に、雑踏の中で話し出した。——競馬場の中では初日ゲームの第一戦を報ずる爆音が揚がった。観覧席からは騎手の名をさけぶファンの絶叫が嵐のように起っている。