不倫

しかしきょうの連隊たちは、みんな洒な背広服を着こんで、また新しい鳥打帽とネクタイと鳴皮の靴まではきこんで、どこの若紳士のお揃いかと思われるような風采だった。——むろんそれは助手さんの手から分配された例の指環のお金のおかげで新調されたものには、違いない。そしてこれからまだ千円ほどある金を資本として、大阪の競馬場の一等観覧席を占めて、馬券のガラ買|合資会社をやって不倫調査 大阪の夢をみている彼等なのである。「諸君、紳士になったら、大阪まめだけはよしたらどう」助手さんは、両手を腰につがえながら、服装と品行のつりあいがとれない彼等のグループを上から眺めて、「それはそうと、浮気はどうしたんだろうね」と、気がかりらしく呟いた。「そうだ、調査だけが来ない」と樫井は芝の上から立ち上がった。そして、丘の端へ歩いてゆく助手さんの後について、そこから目の下に眺められる広い坦道を、いっしょになって見下ろした。沢から大阪の競馬場へとつづいているその道筋には、ほとんど、蟻の行列のような夥しい人間の流れが動いてゆくのが見える。